(11日、第107回全国高校野球選手権1回戦 県岐阜商6―3日大山形)
県岐阜商が狙ったのは、打ち取られていた球だった。
左打席に立った7番横山温大(はると)は「変化球を待っていました」。1点を追う五回、1死二塁。右足を上げたまま球を引きつけ、鋭く振る。速いゴロで一、二塁間を破り、同点の走者を迎え入れた。
2死三塁の場面では、9番渡辺璃海(りくま)。「遅い球を狙った」。外へ落ちていく変化球を左前に流し打って、勝ち越し点をたたき出した。
日大山形の先発・小林永和(とわ)の変化球対策は練ってきた。ただ、四回までは無安打。フライアウトは七つに上った。
ここで慌てない。五回を前に選手たちは「低く強い打球を」「逆方向に」と確認し合った。抑えられた1巡目の打席で、むしろ小林攻略への自信を深めていたという。
「三振はないと確信した」とは、1打席目は中飛に倒れた渡辺璃だ。「速球はカットでファウルにできると思っていました」とも。
「『打てるぞ』ってみんな盛り上がっていた」と振り返る5番宮川鉄平が、五回の先頭で二遊間を破るチーム初安打を放ち、反撃の口火を切った。
実際、日大山形の小林は「(県岐阜商は)ダメだったところを2打席目で修正してきた」。
岐阜大会は6試合で8本塁打を放った長打力が目を引く。リードは一度も許さなかった。一方、この日は単打6本で6点をあげ、好投手を崩しての逆転勝利。藤井潤作監督は「大きな収穫だ」。多彩な引き出しが、次戦でも必ず生きてくる。